【 概 要 】－前田綱紀は寛永２０年（１６４３）、加賀藩３代藩主前田光高と清泰院（徳川頼房の娘、徳川家光の養女）との子供として生まれました。正保２年（１６４５）光高が死去すると前田家の家督を継ぎ、加賀藩４代藩主に就任しています。就任した当時の綱紀は僅か３歳と幼少だった為、祖父である前田利常が後見人として暫く藩政を司っています。承応３年（１６５４）に元服し、４代将軍徳川家綱から「綱利」の名を授かり、正四位下に叙され、左近衛権少将、加賀守に任官されています。万治元年（１６５８）、利常が死去すると正室である摩須姫（松嶺院）の父親保科正之が後見人となっています。保科正之は２代将軍徳川秀忠の庶子、３代将軍徳川家光の異母弟で、家光の片腕として幕政、特に領地である会津藩では様々な善政を行っていた事で綱紀も大きな影響を受けたと思われます。
前田綱紀が加賀藩で行った事績は数多くあり、新田開発や十村制度を整備、飢饉の際に餓死者を出さないよう「御小屋」の整備、長寿者には扶持米付与、加賀八家の制度制定、罪人の減刑、白山の所属争いの決着（白山に接する加賀藩、福井藩の村々を天領とする）、書物奉行の創設、百科事典である「桑華学苑」の編纂、宝生流能楽の導入、書庫の充実、古文書の修復などを行っています。享保９年（１７２４）死去、戒名：松雲院殿徳翁一斎大居士、前田家の墓域である野田山に墓碑が建立されています。家督は前田吉徳が継いでいます。
前田綱紀は社寺の保護も行い、綱紀が疱瘡に罹った際、宇多須神社（石川県金沢市）の井戸から汲み上げた御神水に酒を加え平癒の祈祷を行う、慶安２年（１６４９）には愛染寺（石川県加賀市）を再建し当時の本尊である愛染明王に安産祈願、石浦神社に安産祈願、明暦２年（１６５６）生母である清泰院が亡くなると明暦３年（１６５７）、母親の冥福を祈り母が光高に嫁いだ際の持参品である剣（銘「吉光」：国宝）を白山比咩神社（石川県白山市）に奉納、明暦２年（１６５６）生母である清泰院が亡くなると如来寺を御霊碑所に定め、寺領２００石を寄進し堂宇を造営、万治２年（１６５９）には妙成寺（石川県羽咋市）に寿福院と浩妙院の御霊屋と書院を造営、寛文９年（１６６９）に前田利家の菩提寺である宝円寺を「北陸の日光東照宮」の異名を持つ程の豪華絢爛の堂宇を造営、延宝４年(１６７６)に兼六園の前身である別荘（蓮池御亭）を金沢城に面する地に庭園を造営、元禄年間（１６８８～１７０４年）、河北潟開墾の守護神とする為に諏訪神社（現在の加賀神社）を創建、元禄６年（１６９３）に父親である光高の５０回忌の供養の為、天徳院の堂宇を黄檗式（明朝式）で造営、高爪神社（石川県志賀町）の庇護しています（社殿内部に綱紀の位牌安置）。
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