旧陸軍第九師団司令部庁舎(金沢市)概要: 旧陸軍第九師団司令部庁舎(石川県庁舎石引分室)は石川県金沢市石引4丁目に位置しています。この建物は明治31年(1898)に陸軍第九師団(日清戦争の後、軍備増強の必要性から新設された6個師団の一つ。主に北陸出身の兵士で構成された。)司令部庁舎として建てられたものです。
木造2階建て、寄棟、桟瓦葺き、建築面積275u、縦長の上げ下げ窓、ベランダ手摺風の意匠、基礎の通気口など当時の洋風建築の要素が取り入れられた建物で設計は陸軍経理部が手懸けています。
平面的には左右対称で中央を外壁面から前に張り出させ、その屋根にはペディメント風に妻面を正面に見せ建物を立体的に見せるような工夫が見られ、特に、妻面直下の開口部の意匠や玄関の付け柱など凝った意匠が集中させることで正面性を演出しています。
当初は金沢城の2之丸にありましたが昭和45年(1970)に現在地に移築され、その際、両翼が縮小、現在は石川県庁舎石引分室として利用されています(その後、県民ふれあい公社や石川県立歴史博物館の分室として利用され、令和2年には現在地に移築、国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)として利用されています)。
旧陸軍第九師団司令部庁舎は数少ない当時の木造洋風公共建築の遺構として貴重な存在で「造形の規範になっているもの」との登録基準を満たしている事から、平成9年(1997)に国登録有形文化財に登録されています。
隣接する旧陸軍金沢偕行社(国登録有形文化財)は陸軍将校の社交場、迎賓館の意味合いが高い事から外観も凝った意匠ですが、それに比べると旧陸軍第九師団司令部庁舎はあくまで庁舎建築である為、華美な意匠を廃した機能的な印象を受けます。
旧陸軍第九師団司令部庁舎:上空画像
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